Googleマップでは高評価。口コミも十分な数があり、海外旅行者からの評価も高い。そんな京都の着物レンタル店について、ChatGPTに店名を入力して尋ねてみた。
返ってきた答えは、意外なものだった。
「その店舗は確認できませんでした。」
さらにAIは、その代わりとして、名前がよく似た別の店舗を紹介してきた。
一方で、口コミ数はその半分ほどしかない小さな茶室について尋ねると、料金や所要時間、子ども連れで参加するときの注意点まで、ほぼ正確に説明した。
口コミの多さと、AIがその店を理解しているかどうかは、必ずしも一致しなかったのである。
では、AIは何を見ているのだろうか。
今回、京都の体験型店舗10店を対象に、日本語・英語・繁体字中国語・簡体字中国語の4言語で生成AIへ質問し、その回答を比較した。調べていくうちに、店に対するAIの反応は、おおよそ4つのパターンに分けられることが分かった。
- 正確に理解されている
- 一部を推測で補っている
- 存在を認識できていない
- 別の店舗と混同している
この違いは、口コミの数や店舗の規模では説明できない。むしろ重要だったのは、AIが引用できる形で、その店自身の情報が存在しているかどうかだった。
本記事では、それぞれのパターンを実際の観察結果とともに紹介しながら、AIが店舗をどのように理解しているのかを整理していく。
AIは、あなたの店をどう理解しているのか
パターン1|正確に理解されている
最も理想的だったのはA店である。「A店の料金は?」「所要時間は?」と尋ねると、AIは3つのプランを区別したうえで、それぞれの料金や体験時間を正確に説明した。さらに、子ども連れで参加する際の注意点まで紹介していた。
引用元を確認すると、参照されていたのはすべてA店の公式サイトだった。
興味深かったのは、質問する言語を変えても結果がほとんど変わらなかったことである。A店には中国語版ページが存在しない。それでも繁体字中国語で質問すると、日本語とほぼ同じ内容が返ってきた。
AIが読んでいたのは、中国語のページではなかった。日本語の公式サイトに書かれた内容を理解し、それを質問された言語へ翻訳して説明していたのである。
ここから見えてくるのは、多言語ページの有無そのものではない。AIが理解し、引用できる形で情報が整理されているかどうかである。
A店は決して大規模な店舗ではない。それでも、AIに伝わる情報は整理されており、中国語版ページを持たないにもかかわらず、海外の利用者にも正確な情報が届けられていた。
パターン2|AIは店を知っている。それでも足りない情報は推測で補ってしまう
次に見られたのは、「店そのものは認識しているが、一部の情報は推測で補っている」ケースだった。
B店について尋ねると、住所や営業時間、口コミ評価などは正しく説明された。ところが、料金を尋ねると明確な回答はなく、所要時間については次のように答えた。
体験時間(約60〜90分のプランが中心)
一見すると自然な説明に見える。しかし、あとで公式情報を確認すると、この数字に根拠はなかった。AIはB店の情報を見つけたのではなく、他の茶道体験の情報から「おそらくこのくらいだろう」と推測していたのである。
さらに興味深かったのは、そのあとに続く説明だった。AIはB店だけでなく、他の茶道体験も並べて紹介し、「それぞれの違いも比較できます」と続けていた。つまりAIにとってB店は、「独自の特徴を持つ店」というより、「京都にある茶道体験の一つ」として理解されていたのである。
この状態は、店舗側から見ると最も気づきにくい。店名は検索できる。住所も営業時間も合っている。だから問題なく認識されているように見える。しかし、肝心な情報が不足すると、その空白はAI自身の推測で埋められてしまう。
パターン3|Googleでは高評価。それでもAIは「存在しない」と判断した
最も意外だったのが、このケースだった。
C店はGoogleマップで高評価、口コミも十分な件数がある(2026年半ば時点)。海外旅行者からの評価も高く、Google検索だけを見れば十分に知られた店舗である。
ところがChatGPTに店名を入力すると、返ってきた答えはまったく違っていた。
「(C店名)」という店舗は確認できませんでした。
さらにAIは、その代わりとして、名前がよく似た別の店舗を紹介した。繁体字中国語で質問すると、回答はさらに率直だった。
京都では、この名前の店は見つかりませんでした。
口コミが十分にあっても、それはAIにとって「その店を認識する根拠」にはなっていなかった。
パターン4|見つからない店は、別の店として理解されることがある
同じC店について、同じ質問をもう一度してみた。すると今度は、「存在しない」という回答ではなかった。代わりに返ってきたのは、次のような説明だった。
おそらく「(別の店名)」のことを指していると思われます。
しかし、その店はC店ではない。京都市内にある別法人で、独自ドメインの公式サイトも持つ別の店舗だった。つまりAIは、見つけられなかったC店を、名前が似ている別の店舗として理解してしまったのである。
ここで印象的だったのは、「おそらく」という一言だった。AI自身も、この判断に確信を持っていたわけではない。実際、同じ質問に対して、1回目は「存在しない」、2回目は「別の店ではないか」と、異なる回答を返していた。
これは、AIがC店を知っているというより、判断に必要な情報が足りないため、その都度もっともらしい答えを組み立てていることを示している。
本当に重要なのはここである。口コミが十分にあっても、AIがその店を正しく認識できなければ、その評価は推薦にも説明にも十分に生かされない。店舗側はGoogleでは高く評価されていると感じていても、AIから見える世界では、まったく違う姿になっている可能性がある。
AIは、何を見ているのか
ここまで見てきた4つのパターンは、一見するとまったく別の現象に見える。しかし、引用元を一つひとつ確認していくと、共通する特徴が浮かび上がってきた。
AIが見ていたのは、口コミの数ではなかった。Googleマップの評価でもない。独自ドメインがあるかどうかでもない。
AIが見ていたのは、「その店自身について書かれた情報」が存在しているかどうかだった。
その違いを確かめるため、もう一つの店舗(E店)を加えて比較した。
| 店舗 | 主な情報源 | ページの主語 | AIの反応 |
|---|---|---|---|
| A店 | 自社サイト | A店 | 正確に理解・引用される |
| E店 | 予約SaaS | E店 | 認識され、引用される |
| B店 | 無料CMS | B店 | 認識されるが、一部を推測する |
| C店 | 予約プラットフォーム | プラットフォーム | 店舗として認識されない |
この表を見ると、AIが何を「その店の情報」とみなしているのかが分かる。
A店には公式サイトがある。E店には独自ドメインはない。それでもAIは、どちらも正しく理解していた。理由は共通している。そのページの主語が、その店自身だったからである。
一方、C店で「公式サイト」として登録されていたのは、予約プラットフォーム上の紹介ページだった。しかし、そのページが説明している主体はC店ではない。予約サービスの中で販売されている一つの体験商品である。AIから見ると、C店は「一つの店」ではなく、「予約サイトの中に掲載されているコンテンツ」の一つとして存在していた。
ここで重要なのは、独自ドメインの有無ではない。AIが理解し、引用できる形で、「あなた自身について書かれた情報」が存在しているかどうかである。
近年、このようなAIが認識する対象は「エンティティ(Entity)」と呼ばれることが多い。難しく聞こえるかもしれないが、考え方はとてもシンプルだ。AIはページではなく、「店」という存在を理解しようとしている。そして、その店について説明できる十分な情報があるとき、初めてAIはその店を一つの存在として認識できる。
今回の調査で見えてきた4つのパターンは、その理解の深さの違いだったと言える。
質問が変わると、AIが見る情報も変わる
ここまで見てきたのは、「A店はどんな店ですか?」のように、店名を指定して尋ねるケースだった。しかし、質問の仕方を変えると、AIが参照する情報源も大きく変わる。
たとえば、
「京都でおすすめの茶道体験は?」
と尋ねると、AIは店の公式サイトではなく、旅行メディアや観光サイトを中心に参照するようになる。実際に引用されていた情報源は、次のようなものだった。
- Lonely Planet
- japan.travel(日本政府観光局)
- 京都市の観光サイト
- 「おすすめ○選」といった旅行メディアの記事
このとき、店舗の公式サイトが引用されることはほとんどなかった。つまり、AIは質問によって「探しに行く情報」を切り替えているのである。
この違いを整理すると、次のようになる。
| 質問 | AIが主に参照する情報 | 店舗が力を入れるべきこと |
|---|---|---|
| 「A店はどんな店?」 | 店舗自身が公開している情報 | 自分の情報を正確に整理する |
| 「京都でおすすめの茶道体験は?」 | 旅行メディア・比較記事・観光サイト | 第三者に紹介される機会を増やす |
この二つは、似ているようで、まったく別の課題である。店名で検索されたときには、自分自身について正確に説明できる情報が必要になる。一方、「京都でおすすめは?」のような質問では、AIは第三者が書いた記事を手がかりに候補を探している。
つまり、自社サイトを充実させることと、「おすすめ」として紹介されることは、同じ施策ではない。
では、「おすすめ」はどのように決まるのだろうか。この疑問を確かめるため、同じ質問を日本語・英語・繁体字中国語・簡体字中国語の4言語で比較してみた。すると、業種によってまったく異なる結果が現れた。
茶道体験では、4言語とも、ほぼ同じ店舗が推薦された。一方、着物レンタルでは、言語が変わるたびに推薦される店舗も大きく入れ替わった。なぜ、ここまで違いが生まれるのか。その理由は、AIが引用していた情報源を見ると見えてくる。
同じAIでも、言語が変わるとおすすめの店は変わる
ここまで見てきたのは、「店を知っているかどうか」の話だった。では、「京都でおすすめの着物レンタルは?」と尋ねたとき、AIはどの店を選ぶのだろうか。この問いを、日本語・英語・繁体字中国語・簡体字中国語の4言語で比較してみた。結果は、業種によって大きく異なっていた。
茶道体験では、4言語ともほぼ同じ店が選ばれた
茶道体験では、日本語・英語・繁体字中国語・簡体字中国語のいずれで質問しても、おすすめとして挙げられる店舗はほとんど変わらなかった。言語が変わっても、AIは同じ店を紹介していたのである。
着物レンタルでは、言語ごとにおすすめが入れ替わった
一方、着物レンタルではまったく違う結果になった。4言語すべてで共通して推薦された店舗は、一つもなかった。
| 店舗 | 日 | 英 | 繁 | 簡 |
|---|---|---|---|---|
| 店① | ● | ● | ● | |
| 店② | ● | ● | ● | |
| 店③ | ● | ● | ● | |
| 店④(C店と混同された競合店) | ● | ● | ● | |
| 店⑤ | ● | ● | ||
| 店⑥ | ● | |||
| 店⑦ | ● | |||
| 店⑧ | ● | |||
| 店⑨ | ● | |||
| 店⑩ | ● | |||
| 店⑪ | ● | |||
| 店⑫ | ● | |||
| 店⑬(業界最大手) | ● | |||
| 店⑭ | ● |
日本語で上位だった店舗が、中国語では一度も登場しない。逆に、中国語では推薦される店舗が、日本語ではまったく出てこない。さらに、日本最大級の店舗であっても、ある言語では推薦され、別の言語では一度も推薦されない例も確認された。
前半で紹介したC店についても同じだった。AIは店名を尋ねられても正しく認識できず、おすすめとしても4言語すべてで一度も紹介しなかった。
なぜ、言語によって結果が変わるのか
理由は、AIが参照していた情報源を見ると分かる。
| 言語 | 茶道体験で主に引用されていた媒体 | 着物レンタルで主に引用されていた媒体 |
|---|---|---|
| 日本語 | japan.travel・japan-atlas など | 着物レンタル比較ナビ など |
| 英語 | Lonely Planet・Reddit など | Japan Cheapo など |
| 繁体字中国語 | michi-japan・japan-atlas など | MATCHA・Japan Cheapo など |
| 簡体字中国語 | (各言語共通の国際旅行メディア) | MATCHA・Japan Cheapo など |
茶道体験では、どの言語でも、国際的な旅行メディアや政府観光サイトが中心だった。AIが見ている情報源がほぼ共通しているため、紹介される店舗も自然と似たものになる。
一方、着物レンタルでは違っていた。日本語では日本語の比較サイト。英語では英語圏の旅行メディア。中国語では中国語圏でよく読まれている旅行メディア。AIは、それぞれ異なる記事を参考にしていた。
つまり、AIがおすすめする店は、「どの言語で質問したか」だけでは決まらない。その言語でAIがどの記事を読んでいるかによって、大きく左右されるのである。
ここで引用されていたのは、大手ニュースメディアではなかった。旅行メディアや比較サイト、ランキング記事といった、「京都でおすすめ○選」のような記事を継続的に発信している媒体だった。少なくとも2026年7月時点では、こうした記事が、AIの推薦結果に大きな影響を与えているように見えた。
「どの言語を優先すべきか」という問いには、まだ答えはない
この結果を見ると、「まず英語に対応すべきか」「中国語を優先すべきか」と考えたくなる。しかし、今回の観察だけでは、そのような一般論は導けなかった。
実際には、業種によってAIが参照する情報源が異なり、その結果として、推薦される店舗も変わっていた。つまり、「正解の言語」は存在しない。
現時点で最も確実なのは、自分の業種と届けたい言語について、AIが実際にどの情報源を引用しているかを調べることである。
ここまでの観察から見えてきたこと
今回の調査から、少なくとも四つのことが分かった。
1. 店名で質問されたときは、自分自身の情報が重要になる
「A店はどんな店ですか?」――このように店名を指定して尋ねられた場合、AIはまず、その店自身について書かれた情報を探している。料金、所要時間、対応言語、予約方法。こうした事実が整理され、AIが引用できる形で公開されていれば、回答の精度は高くなる。
逆に、情報が不足している場合、その空白はAIの推測によって埋められることがある。重要なのは、「ホームページを作ること」ではない。AIが理解し、引用できる形で、自分自身について説明していることだ。
2. 「おすすめ」は、自社サイトだけでは決まらない
一方、「京都でおすすめの茶道体験は?」のような質問では、AIが見ている情報はまったく違っていた。旅行メディア。比較サイト。観光サイト。Reddit。AIはこうした第三者の情報をもとに候補を選んでいた。
つまり、自社サイトを整えることと、「おすすめ」として紹介されることは別の課題である。どちらか一方だけでは十分とは言えない。
3. 一般論より、自分の業種を調べるほうが早い
今回の調査では、茶道体験と着物レンタルで、AIが参照する情報源は大きく異なっていた。その結果、言語が変わってもほぼ同じ店舗が推薦されるカテゴリもあれば、言語ごとにまったく違う店舗が推薦されるカテゴリもあった。
「まず英語を優先すべきか」「中国語にも対応すべきか」――こうした問いに共通の答えはない。まず確認すべきなのは、自分の業種で、AIが実際にどの情報源を引用しているかである。
4. 小さな店にも、まだチャンスはある
今回の調査では、大手ではない店舗でも、AIが繰り返し引用する例が確認された。共通していたのは、店舗自身についての情報が整理され、その店ならではの特徴が分かる形で公開されていたことである。
もちろん、これだけで推薦されるとは言えない。しかし、比較サイトだけに依存せず、自分自身の情報を積み重ねていくことは、小規模な店舗にとっても現実的な選択肢の一つになるだろう。
この調査で分かったこと、まだ分からないこと
本調査は、京都の体験型店舗10店を対象に実施した小規模な観察である。対象とした生成AIはChatGPTのみであり、すべての結果を他のAIへ一般化できるわけではない。
また、生成AIの回答は一度ごとに変化する。実際、同じ店舗について同じ質問を繰り返しただけでも、異なる回答が返る場面が確認された。そのため、本来であれば、同じ質問を繰り返し実行し、その分布まで含めて評価する必要がある。
本記事で紹介した結果は、その出発点となる観察記録として公開している。
おわりに
調査を始める前、私は「言語が変われば、おすすめされる店も変わるだろう」と考えていた。結果として、その予想は半分だけ当たり、半分は外れた。
茶道体験では、4言語でほぼ同じ店舗が推薦された。一方、着物レンタルでは、言語が変わるたびに推薦される店舗も変わった。
今回得られたのは、完成した理論ではない。一つひとつ観察し、その結果から少しずつ見えてきた仮説である。生成AIが情報をどのように理解し、どのように引用するのか。その全体像は、まだ誰にも分かっていない。
だからこそKääselä AI Search Labでは、当たった結果だけでなく、予想と違った結果も含めて記録し、毎月の観察として公開していきたいと考えている。
AI検索は、まだ変化の途中にある。その変化を、できるだけ先入観を持たずに記録し続けること。それが、このプロジェクトの役割だと思っている。
参考・背景
本記事で「エンティティ(Entity)」と呼んでいる考え方は、英語圏では entity-based SEO として知られており、生成AIの文脈では GEO(Generative Engine Optimization) の中で議論されている。学術的な出発点の一つとしてよく引用されるのが、Aggarwalらによる『GEO: Generative Engine Optimization』(arXiv:2311.09735、KDD 2024)である。同論文では、生成AIに情報を認識・利用してもらうための条件として、retrievable(検索可能であること)、groundable(根拠として利用できること)、citable(引用できること)の3つが整理されている。また、エンティティの認識には、Schema.orgなどの構造化データ、第三者サイトでの一貫した言及、一貫した識別子などが重要なシグナルになるとされている。一方で、「特定のレビューサイトに掲載されているとAIに引用されやすい」といった具体的な数値やノウハウについては、業界内で広く語られているものの、現時点では査読付き研究によって十分に検証されたものではない。本記事でも、その点については参考情報として扱っている。
本記事は、個人による調査・情報共有プロジェクトであり、特定の団体・大学・企業等とは関係ありません。調査方法の詳細や、自社の検証に興味のある方は、お気軽にご連絡ください。