Monthly Report #000
京都の体験サービスにおける生成AIの回答傾向(2026年7月)

Kääselä Monthly Report #000 2026-08-02 読了目安 約10分

#AI検索 #GEO / LLMO #多言語 #茶道 / 着物 / 座禅 #ゆらぎ幅

  1. 1要旨
  2. 2方法
  3. 3引用元分布
  4. 4事業者の出現率
  5. 5前号との差分
  6. 6どこまでを「差」とみなせるか
  7. 7適用範囲・限界
  8. 8改訂記録
  9. 9付録・データ

1. 要旨(Abstract)

第2版(2026年8月20日改訂)。初版は2026年8月公開。変更点は改訂記録に記載。

本レポートでは、ChatGPTに対して「京都の茶道」「着物」「座禅」のおすすめを4言語でそれぞれ20回ずつ尋ね、回答中で引用された情報源を記録した(カテゴリ×言語の組合せ=全12セル・240観測)。

引用元は、カテゴリと言語によって大きく異なった。以下、この違いを「カテゴリによる違い」「言語による違い」「事業者の顔ぶれ」という三つの角度から見る。

カテゴリを見ると、着物は送客型(比較メディア・OTA)への依存度が最も高く、座禅では公共サイトや事業者自身の公式サイトが中心となる——この差は、20回の観測につきものの誤差を差し引いても消えない大きさである(詳細は§3.2)。

言語を見ると、差は主に英語に集中している。茶道・着物では英語だけが送客型に大きく寄り、座禅では言語による差がほとんど確認できない(詳細は§3.3)。

事業者を見ると、紹介される顔ぶれの共通度もカテゴリで異なる。着物では言語を超えて概ね同じ顔ぶれが並ぶが、茶道と座禅では英語だけが違う顔ぶれを返す——引用元で見えた「英語だけが違う」という構図は、誰が紹介されるかというレベルでも同じ形で現れている(詳細は第4章)。

この違いは、「カテゴリの商業性」と「言語ごとの情報供給」という二つの条件との対応関係にあると考えられる。ただし本号は単一時点・単一エンジンによる横断観測であり、この対応関係はあくまで観測パターンと整合する仮説的な説明であって、因果関係を立証したものではない

第0号(本号)は、この観測方法と評価指標を定義するベースラインである。今後公開する月次レポートでは、本号を起点(t=0)として、この構造がどのように変化するかを追跡する。

2. 方法(Methodology)

本調査では、ChatGPT(GPT-5.5・Web版)を一時チャットで利用した。

「京都+カテゴリ語+『おすすめ』などの推薦語」を基本クエリ(推薦型クエリ)とし、日本語・英語・簡体中文・繁体中文の4言語で観測を実施した。対象カテゴリは「茶道」「着物・和服」「座禅」の3種類である。

各クエリは20回(n=20)連続して実行し、回答中で引用された事業者名と引用元ドメインを記録した。あわせて、実行日時、実行地(京都市)、回線、モデル名も記録している。

引用元は、「公共」「自社」「OTA(オンライン旅行代理店)」「メディア」「ディレクトリ(分野別の店舗・施設一覧サイト)」「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」の6種類に分類した。記録は店舗単位で行い、集計はブランド単位で実施した。

なお、キーワード型(例:「京都 茶道体験 おすすめ」)と自然文型では、返される事業者に有意な差がないことを事前に確認している。そのため、本調査ではすべてキーワード型に統一した。

3. 引用元分布(Findings)

3.1 12セルの引用元・主導種別(構成比 %)

日本語英語簡体中文繁体中文
茶道公共 52.2メディア 56.6公共 43.9(次点:自社30.5・差13pt)公共 41.2(次点:自社30.9・差10pt)
着物メディア 53.7メディア45.5+OTA34.5=約80メディア 34.1(次点:公共29.5・差5pt)メディア 37.0(次点:自社32.6・差4pt)
座禅公共59.6+ディレクトリ28.1自社67.1公共 45.7(次点:自社34.3・差11pt)公共 51.3(次点:自社28.2・差23pt)

表3.1で最も大きく動いているのは、言語ではなくカテゴリである。

引用元を「送客型」(客を店へ送って手数料を得る比較メディアとOTA)と「非送客型」(公共サイト・事業者自身の公式サイト・ディレクトリ・UGC)の二つに束ねると、構造が見えやすくなる。数値は送客型の比率、括弧内は95%区間である。

日本語英語簡体中文繁体中文
着物68.3
[56.5–80.0]
80.0
[72.5–88.2]
43.2
[25.5–61.7]
45.7
[28.2–62.2]
茶道22.4
[13.4–32.4]
62.7
[57.5–67.9]
14.6
[8.1–21.6]
16.2
[5.9–28.1]
座禅7.0
[1.8–12.7]
13.7
[5.7–22.0]
8.6
[2.7–16.0]
7.7
[2.7–12.5]

順位の判定について。表3.1は各セルの首位種別を示しているが、n=20ではその順位自体を判定できないセルがある。首位と2位の差を復元抽出(ブートストラップ)で検定すると、12セル中7セルで首位が確定し、5セル(茶道・繁体中文/着物・英語/着物・簡体中文/着物・繁体中文/座禅・簡体中文)では順位を判定できない。表の首位表示は点推定であり、順位の確定を意味しない。上の「送客型 対 非送客型」という二分は、この判定不能を避けるために種別を束ねたものである。

3.2 カテゴリによる違い——着物は送客型、座禅は非送客型

カテゴリを見ると、引用元の構成には明確な差がある。着物と座禅の差は、観測のばらつきでは説明がつかない大きさだった。着物は4言語のうち最も低い数値でも25.5%、座禅は最も高い数値でも22.0%——20回の観測につきものの誤差(区間)を差し引いても、両者の数字は一度も交わらない。4言語のどの組み合わせで比べても、着物のほうが送客型に寄っている。

着物レンタルは、比較サイトやアフィリエイトサイトが成立する市場規模を持つ。一方、座禅の多くは無料の坐禅会であり、客を送って手数料を得る構造そのものがない。引用元の構成は、その市場に比較媒体を作る経済的な動機があるかどうかと対応している。

「京都 着物レンタル おすすめ」では、一つのランキングサイト(2025年開設、観測時点で約15か月運営)が20回中18回(90%)の実行で引用された。このサイトだけで、「メディア」種別(53.7%)の大半を占めている。一方、政府観光サイトの引用は相対的に少なかった。この結果は、AI時代の可視性が、特定の目的に特化した比較メディアへ集中する可能性を示している。今後、このランキングサイトのシェアがどのように変化するかを、着物カテゴリの主要な観測指標として追跡する。

座禅カテゴリでは、すべての言語で、寺院など提供者自身の公式サイト、または公共サイトが引用の中心となった。日本語は公共59.6%、英語は自社67.1%、簡体中文は公共45.7%、繁体中文は公共51.3%である。OTAは最大でも9.6%(英語)にとどまり、アフィリエイトはほとんど確認されない。4言語のいずれにおいても、商業的な仲介が引用の首位になるセルは一つもなかった。

この結果は、比較メディアが十分に存在しないカテゴリでは、提供者自身が発信する情報がAIに引用されやすいことを示している。また、英語ページを持たない提供者は候補に入りにくく、多言語で公式情報を発信していること自体が可視性につながることも確認された。

3.3 言語による違い——差は英語に集中する

言語による違いは英語に集中している。茶道では英語の62.7%に対し、日本語22.4%・簡体中文14.6%・繁体中文16.2%となり、区間はいずれも重ならない。着物でも英語80.0%は簡体中文43.2%・繁体中文45.7%を上回る。一方、座禅は4言語とも7.0〜13.7%の範囲に収まり、言語による差は確認できない。

つまり言語軸は「日本語圏と中国語圏で構造が違う」という形では現れなかった。現れたのは「英語だけが送客型に寄る」という形であり、3カテゴリのうち2カテゴリで確認された。

比較メディアがないとき、引用の受け皿も言語で分かれる。座禅では、英語が事業者自身の公式サイト(67.1%)に寄るのに対し、日本語・簡体中文・繁体中文は公共サイト(45.7〜59.6%)に寄る。同じ「比較メディアがない」という条件でも、AIが代わりに引くものは言語で異なる。

簡体中文・繁体中文を合わせた6セルでは、小紅書、馬蜂窩、携程、大衆点評、微博、知乎など、中国系プラットフォームは一度も引用されなかった。

中国語で質問した場合でも、AIが引用するのは日本側が発信する情報であり、一部では英語の Reddit も参照された。中国語話者がAIを利用した場合でも、主に参照されるのは中国語圏の情報ではない。さらに、日本側の情報のうち中国語で書かれたページが選ばれることも、ほとんどなかった。

補足:中国語クエリで、どの言語のページが引用されたか

簡体中文の着物カテゴリでは、比較メディアが引用の首位となった(34.1%)。公共29.5%、自社25.0%がこれに続く。ここまでは日本語・英語と同じ構図に見える。

しかし、引用されたメディアの内訳を見ると、様相が変わる。

引用元引用された実行回数引用されたページの言語
kyoto-kimonorental.jp6回(30%)日本語
kimono-rentaru.jp3回(15%)英語
japancheapo.com3回(15%)英語
livejapan.com1回(5%)日本語
rentalkimonozukan.com1回(5%)日本語
matcha-jp.com1回(5%)英語

6つのメディアはいずれも日本側が運営するものであり、引用されたページは日本語または英語だった。中国語のページは1件もない。

簡体中文で観測された全URL 110件のうち、中国語ページと判別できたものは3件にとどまる。しかもその3件はすべて事業者自身の多言語サイトであり、メディアではない。茶道カテゴリではさらに少なく、簡体中文79件・繁体中文85件のいずれも中国語ページは0件だった。

同じ記事が、言語によって異なる版で引用される

繁体中文と並べると、この構造が一点に集約される。

記事番号は同一(12453)である。同じ記事に対して、繁体中文では中国語版が、簡体中文では英語版が引用された。繁体中文で中国語版が引用されている以上、この媒体が中国語のページを持つことは観測から確認できる。それにもかかわらず、簡体中文では英語版が返った。

第0号の時点では、原因を特定できない。次の3つは本データから区別できない。(1) 該当媒体の簡体字版が当該記事について存在しない、(2) 存在するがAIの検索経路に載っていない、(3) 存在し検索経路にも載っているが他の要因で選ばれなかった。(1)と(2)を分けるには媒体側の簡体字版の有無を1件ずつ確認する必要があり、これは第1号までの課題とする。

確認された事実として記録できるのはここまでである。中国語で質問しても引用されるのは日本側が発信する情報であり、その情報のうち中国語で書かれたページはほとんど選ばれない。中国語話者がAIを通じて京都の事業者を探すとき、実際に読まれているのは日本語と英語の情報である。

判定上の限界

簡体中文・着物のセルは種別間の差が小さい。首位のメディア34.1%と2位の公共29.5%の差は4.5ポイント、3位の自社25.0%との差は9.1ポイントである。このセルのゆらぎ幅(§6)は、同一条件20回の再現から求めた95%区間の半幅で15.6ポイント、2期比較の判定閾値は23ポイントである(付録A)。したがって「メディアが首位である」という順序自体、n=20では判定できない。上の表で確定的に言えるのは、引用されたメディアのページ言語が日本語と英語だけだったという点であり、種別の順位ではない。

4. 事業者の出現率(ブランド単位・上位グループのみ)

ここまで見てきたのは、AIが何を情報源として使うかである。では、実際に誰を紹介するかも、同じように言語で変わるのだろうか。答えは、カテゴリによって違う。

なお、第0号で評価できるのは、上位グループへの集中度までである。前号が存在しないため、月次変化については扱わない(差分は第5章参照)。また、第3章で分析した引用元分布と、本章で扱う事業者の出現率は異なる指標である。第3章が「どの情報源が引用されたか」を見るのに対し、本章では「どの事業者が回答中で名前を挙げられたか」を分析する。

結論から述べる。「4言語で同じ事業者が名前を挙げられるか」は、カテゴリによって異なった。着物では概ね重なり、茶道と座禅では重ならない。

着物:上位8事業者は、4言語すべてで名前が挙がった。ただし出現率には幅がある。

事業者(匿名ID)日本語英語簡体中文繁体中文
K-0390%85%70%55%
K-0190%35%55%95%
K-0490%75%20%45%
K-0725%70%85%85%
K-0265%25%30%45%
K-0550%85%50%55%
K-0940%10%25%5%
K-1330%25%45%30%

8事業者のいずれも、4言語すべてで最低5%以上の出現があり、完全に消えるものはない。一方で「ほぼ毎回名前が挙がる」と言えるのは、各言語で1〜2事業者にとどまる。言語間の差は最大70ポイント(K-04)である。

茶道:着物とは異なり、上位グループは4言語で共通しなかった。

事業者(匿名ID)日本語英語簡体中文繁体中文
T-0660%100%90%100%
T-0375%100%100%100%
T-0180%10%90%90%
T-0865%5%65%55%
T-1030%80%30%15%

4言語で共通するのは上位2ブランドのみである。T-01は日本語80%・簡体中文90%・繁体中文90%に対し、英語では10%まで落ちる。T-08も同様に、日本語65%・簡体中文65%・繁体中文55%に対し、英語だけが5%となる。逆にT-10は英語80%に対し、他の3言語は15〜30%である。英語だけが他の3言語と異なる顔ぶれを返している。

座禅:4言語すべてに現れる寺院は1件のみだった。その1件も、日本語では5%、英語85%・簡体中文65%・繁体中文55%と大きく偏る。他の寺院は英語に集中し、日本語ではほとんど現れない。日本語では公共サイト経由で紹介されるため(§3.2)、寺院自身のサイトが引用される機会が少ないことと対応している。

方法の限界。本章の照合方法はカテゴリごとに異なる。茶道の英語は全20回の回答を目視で読み、表記ゆれを統合した。他は事業者名の文字列検索、および座禅では寺院自身のドメインの出現による代替指標である。なお茶道の英語は、目視照合と文字列検索が5事業者すべてで一致した。目視照合を経ていないセルの数値は、表記ゆれによる過小評価を含みうる。また個体の出現率は n=20 で誤差±22ポイントを持つ。上表で言語間の差として扱えるのは、この幅を超えるものに限られる。

第0号では、この分布をベースラインとして記録する。月次でどのような変化が起こるかは、第1号以降で追跡する。

5. 前号との差分

第0号は、本レポートシリーズのベースラインである。そのため、比較対象となる前号は存在しない。本号で示した結果を基準(t=0)とし、第1号(2026年9月)以降は、この基準からの変化を継続的に記録する。

6. どこまでを「差」とみなせるか

本レポートでは、同じ質問を何も変えずに繰り返しても回答が揺れる幅を「ゆらぎ幅」と呼ぶ。月次の変化を評価する際は、この幅を超える変化のみを意味のあるシグナルとして扱う(詳細は付録A参照)。同じクエリを20回繰り返した場合の、引用元集合の一致度(Jaccard係数)は以下のとおりである。

簡中繁中
茶道0.250.190.340.20
着物0.410.160.140.10
座禅0.400.290.270.28

同じ質問であっても、引用元の半数以上は実行ごとに入れ替わる。

日本語の茶道は0.247となり、Green et al. が報告した値(0.265)に近い水準となった。Green らはChatGPTの内部検索経路を通信の観測から測っており、事業者の登録情報から生成される事業者情報カードは含まない。本調査も訂正後は引用経路のみを数えているため、両者は同じ対象を測っている。なお日本語の茶道は事業者情報カードが1件も出なかったセルであり、訂正の前後で値が変わらない(0.247)。外部研究との一致は、この最も条件の揃ったセルで確認されたことになる。英語の茶道は0.189で、日本語ほど近くはない。

したがって、1回の回答(n=1)だけから「AIはこう答える」と結論づけることはできない。引用元の構成比が20回の観測でどこまで収束するかは、セルによって異なる。95%区間の半幅は最小6.3ポイント(茶道・英語)から最大15.6ポイント(着物・簡体中文)まで、2.5倍の開きがある。全セル一律の基準は使えないため、第1号以降の差分判定にはセルごとに算出した閾値を用いる(一覧は付録A)。一方、個々の事業者の出現率はばらつきが大きく、第0号では上位グループのみを評価対象とした。

7. 適用範囲・限界(Limitations)

適用範囲:本レポートが対象とするのは、推薦型クエリ(「京都 着物レンタル おすすめ」のように、候補を尋ねる質問)に対する回答のみである。特定の店舗同士を比べる質問、予約や購入に直結する質問、店名を指名した質問など、異なる検索意図では引用元が変わる可能性がある。

本号は単一時点の観測結果(t=0)であり、変化やトレンドを論じるものではない——それらは第1号以降、月次データをもとに分析する。調査対象もChatGPT(GPT-5.5)・単一観測者・単一実行地という条件に限定されており、結果をそのまま他の生成AIや異なる実行条件へ一般化することはできない。

第3章で示した「カテゴリの商業性」「言語条件」「自己記述能力」の間の対応関係についての説明は、観測されたパターンと整合する仮説的な解釈であり、因果関係を立証したものではない。

本レポートでは、このような適用範囲をあらかじめ明示したうえで結果を解釈する。これは、単一の回答(n=1)から一般的な結論を導くのではなく、一定数の観測結果に基づいて傾向を評価するという、本調査の基本的な立場でもある。

8. 改訂記録

第2版(2026年8月20日)

初版の集計は、回答中に事業者名とともに表示される登録情報(事業者情報カード)を、引用として数えていた。これは検索にもとづく引用とは別の経路である。第2版では両者を分離し、本文の数値は引用経路のみで再集計している。カードのドメインは98〜100%が事業者自身のサイトであるため、初版ではカードが出やすいセルほど自社サイトの比率が高く出ていた。

この変更により、12セル中6セルで最も多く引用された種別が入れ替わった。初版の次の2点は取り下げる。

カード経路のデータは削除せず、placecards.csv として独立の指標で公開する。第1号以降は2つの経路を並記する。判定閾値も同時に再校正し、セルごとに算出し直した(付録A)。

9. 付録・データ(Appendix / Data)

本記事は、個人による調査・情報共有プロジェクトであり、特定の団体・大学・企業等とは関係ありません。データはCC BY 4.0で無償公開しており、販売は行いません。

Top